各所で話題になっていた『ブランディングの科学』を読んだのでその内容をまとめます。
結論からいうと、現代を生きるマーケターの方々は必読です。
『ブランディングの科学』を読んだ人とそうでない人とでは、今後のマーケティング施策の成功率は大幅に変わってくると感じました。
スライドに『ブランディングの科学』の内容を簡単にまとめましたので、まずはこちらをご覧ください。
具体的な内容についてこれより解説していきます。
- マーケティングに関わる方
- ブランディングに関わる方
- 新たなマーケティング理論に興味がある方
マーケターの方必読
従来のマーケティングは嘘だらけ?
マーケティングに携わる方であれば、これまでに様々な理論を耳にしてきたことでしょう。
現在の主流は、STP理論でブランドの立ち位置を決め、その限定したターゲットのロイヤルティを極限まで高めるCRM戦略を行い、効率の良いマーケティング施策でROIを高めることだと習ったのではないでしょうか?
STP = セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
CRM = カスタマーリレーションシップマネジメント
ROI = リターン・オン・インベスティング
著者のバイロン・シャープによれば、上述のような従来マーケティング理論は全くエビデンスに基づいておらず間違っているそうです。
彼はコトラーの理論も痛烈に批判しており、「優れた製品を作り、高価格帯で販売し、コアターゲットにリーチし、広告で製品の優位性を想起させることがマーケティングの成功である」という考えは全く事実に基づいていないと述べています。
これまで信じてきたマーケティング理論がデータとともにことごとく覆されました…。
『ブランディング科学』では、すべてのマーケターが知っておくべき消費者の購買行動やビジネスの成長を予測するための一定のパターンを伝えることを目的としているそうです。
新しいマーケティングの11の法則
マーケティング理論は時代や消費者とともに変化するため、常に発展の余地を残しています。
現代の消費者行動をデータに基づくファクトによって法則化すると以下の11個が存在するようです。
- ダブルジョパディの法則
- リテンションダブルジョパディの法則
- パレートの法則(60/20)
- 購買行動適正化の法則
- 自然独占の法則
- 顧客基盤が類似する
- ブランドに対する態度と思いが行動的ロイヤルティに反映される
- ブランド使用体験が消費者の態度に影響を与える
- プロトタイプの法則
- 購買重複の法則
- NBDディリクレ
それぞれの法則の詳細な説明は本書に任せますが、特徴的で興味深い内容をいくつかピックアップして説明していきます。
シェアが小さければロイヤルティは保てない
従来のマーケティング理論では、シェアとロイヤルティは無関係だと考えられてきました。
従って、シェアの小さい小規模ブランドでもロイヤルティの高い顧客が保てると考えられていたはずです。
しかし本書によれば、シェアが小さければロイヤルティは保てないそうです。
衝撃…。
売上高を構成する要素は以下2つに分けられます。
- ブランドの購買客の数
- ブランドの購買客の購入頻度
理論的には、以下の2種類のブランドが存在することになります。
- 購買客数は多いが、購買頻度が低いブランド
- 購買客数は半分でも、購買頻度が2倍のブランド
しかし現実にはそのような状況になることありません。
なぜならマーケットシェアによって購買頻度がほぼ決まってしまうからです。
詳しいデータ等は本書に数多く載っていますので、疑わしい方はぜひ一読してみてください。
要点だけまとめると、マーケットシェアの低いブランドは顧客のロイヤルティ(高い購買頻度)を保つことはできず、売り上げを最大化するためにはまずマーケットシェアを取りに行かなければならないのです。
ブランドの成長には新規顧客の獲得が必須
皆さんは、ブランドにとってもっとも大切な顧客は誰かと聞かれたらどう答えますか?
以下のような答えが多いと予想します。
- ロイヤルユーザー
- ヘビーユーザー
つまり、購買頻度の高いユーザーがブランドにとってもっとも大切であると考えている方が多いはずです。
実際に、これまでのマーケティングの教科書的な教えではそのように考えられてきました。
だからこそ、顧客の維持が重要視されており、ロイヤリティ構築やインフルエンサー・ターゲティング、CRMなどが進められてきました。
しかし、ブランドにとってもっとも大切なことは新規顧客の獲得であると本書でははっきりと述べられています。
なぜなら実際の消費者たちは、特にブランドにこだわってはいないからです。
そのため大半のユーザーは特にブランドにこだわりのないライトユーザーであり、ロイヤリティプログラム等を実施しても獲得できるマーケットシェアはごくわずかに獲得、もしくは全く獲得できないでしょう。
実際にターゲットをライトユーザーやノンユーザーに絞っているブランドの成功確率が高いこともデータからわかっているようで、新規顧客の獲得に全力を尽くす方がブランドにとっては大きなメリットになるのでしょう。
差別化ではなく、独自性が大切
マーケティングの教科書は、差別化がマーケティング戦略の中心であるべきだと声高に語っています。
しかし、差別化の重要性を示すエビデンスを提示できている理論はほとんどありません。
差別化の重要性をファクトと共に否定されたら多くのマーケターは困惑するでしょうね..。
消費者がブランドの差別化を認識していることなどほとんどなく、差別化が購買行動を駆り立てるなどといったことはまずないのです。
つまり「差別化か、それとも死か」といった状況では全くを持ってありません。
そこで、差別化の重要性が相対的に下がってきた際に重要になってくるのが独自性です。
独自性とは、その製品がどのようなブランドであるのかを示す要素のことで、色やロゴ、キャッチフレーズ広告手法など様々な要素が存在します。
例えば、コカコーラといえば赤色、ナイキの “Just do it”などはブランドの独自性です。
こうした独自性があることによって、消費者のブランドの認知・認識・想起を容易にしてくれて、選択肢の多すぎるこの世界において有力な候補となってくれる確率が高くなります。
マーケターであれば、教科書の内容を鵜呑みにして「差別化」を求めるのではなく、独自性を創り出すブランディングに精を出していきましょう。
『ブランディングの科学』の要約まとめ
ブランディングの科学には、これからのマーケティングに必要なことがたくさん書かれていました。
要点をざっくりまとめると以下のようになります。
マーケターは、マスマーケティングを行い、認知・想起を拡大し、マーケットシェアを最大化する努力する必要がある
ターゲティングや差別化といったエビデンスに基づいていない理論を鵜呑みにするのはもうやめましょう。
この本に載っている11の法則を理解して、ファクトに基づく正しいマーケティングをしていくことで、多くの人に愛されるブランドを創ることができるのではないでしょうか?
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